若葉の技術メモ

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コンピュータやプログラミング・数理に関して調べたり、取り組んだりしたことをまとめる若葉のノート。

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【わかりやすい確率の基礎】確率空間ってなんですの?

f:id:wakaba-mafin:20181127160445j:plain 確率を勉強をしようと思うと、参考書の最初の章に登場する彼。


  \left( \Omega, \mathcal{F}, P\right)

そう。確率空間

しかし、確率空間について深く考えたことはありますか?

学生時代の私もあまり深く考えたことはありませんでした。

そこでこの記事では確率空間とは何なのかについてご紹介したいと思います!


はじめに

確率空間とは

  • 集合 \Omega:確率現象が生じる場所

  •  \sigma - 加法族 \mathcal{F}:集合 \Omegaの中で確率を計算できる部分集合の集まり

  • 確率測度 P:確率を計算できる部分集合に対する確率の値を与える関数

の3つ組


  \left( \Omega, \mathcal{F}, P\right)

からなります。ここからは、集合・ \sigma -加法族・確率測度の順に説明していき、最後に確率空間とは何なのかについて触れたいと思います!

集合と部分集合族

まずは集合です。集合とは細かいことは置いといて単純に要素の集まりです。例えば、

  • 自然数の全体  \mathbb{N}:=\left\{ 1,2,3,\cdots \right\}

  • 整数の全体  \mathbb{Z}:=\left\{\cdots, -3,-2,-1,0,1,2,3,\cdots \right\}

  • 実数の全体  \mathbb{R}

などです。もちろん、この他にも1つのサイコロの目の全体


  \{ , , , , , \}

なども集合になります。

そして、集合 \Omegaに対して、 \sharp \Omega \Omegaに含まれる要素の数を表し、

  •  \sharp \Omegaが有限の場合: \Omegaを有限集合f:id:wakaba-mafin:20181128013254j:plain:right:w120

    単純に数え切ることができる集合

  •  \sharp \Omegaが有限でない場合:

といいます。(※「有限集合または可算集合である」を「高々可算集合である」といいます)

さて、ここまでで集合を確認しました。ここからは部分集合について見ていきましょう!

部分集合とはある集合に含まれる集合のことです。つまり、集合 \Omegaに対して、集合 A\Omegaの部分集合であるとは、


  ^\forall x, x \in A \Rightarrow x \in \Omega

であることをいいます。つまり、 Aの要素がすべて \Omegaに含まれている場合、 A\Omegaの部分集合であると言います。このことを A\subset \Omegaなどと表したりします。

そして、集合 \Omegaの部分集合からなる集合のことを \Omega部分集合族といいます。例えば、

  •  \Omegaの部分集合の全体(べき集合) 2^{\Omega}

  •  \left\{ A\subset \Omega | \sharp A = 2\right\} \Omegaの要素数が2の部分集合の全体

などが挙げられます。

さて、この辺りは怖い方々たくさんいそうなので、ひとまずこの辺りでやめておきましょう💦

というわけで、次は\sigma -加法族です!

 \sigma -加法族

 \sigma -加法族とは、簡単に言うと確率を計算することができる部分集合が満たしてほしい性質を満たした部分集合族です。

例えば、

  1. 空集合に対する確率、つまり何も起こらない確率は0であって欲しいので、空集合 \phiは確率が計算できる部分集合であってほしい。

  2.  A \subset \Omegaが起こる確率が計算できたら、 Aが起こらない確率、つまり A^{C}が起こる確率も計算できてほしい。

  3. 可算個の部分集合 A_1, A_2, A_3, \cdots \subset \Omegaの起こる確率がそれぞれ計算できたら、そのいずれかが起こる確率、つまり \cup_{i=1}^{\infty}A_iの起こる確率も計算できてほしい。

があります。

これらを具体的に数式で定義したものが \sigma -加法族です。

つまり、 \Omegaの部分集合族 \mathcal{F} \subset 2^{\Omega} \sigma -加法族であるとは、

  1.  \phi \in \mathcal{F}

  2.  A \in \mathcal{F} \Rightarrow A^{C} \in \mathcal{F}

  3.  A_i \in \mathcal{F}, i\in \mathbb{N} \Rightarrow \cup_{i=1}^{\infty} A_i \in \mathcal{F}

の3つを満たすこととして定義されます。

例えば、どのような部分集合族が \sigma -加法族になるのでしょうか?

まず、べき集合 2^{\Omega}は全ての部分集合を含んでいるのでもちろん \sigma -加法族です。また、最も小さい \sigma -加法族としては \left\{ \phi, \Omega \right\}。その他の \sigma -加法族としては

  •  A\subset \Omegaに対する \sigma [ A] := \left\{ \phi, A, A^{C}, \Omega\right\}

  •  \left\{ A\subset \Omega | A または A^{C}が高々可算\right\}

などがあります。

確率測度

というわけで、確率的な現象が生じる場所:集合 \Omega \Omegaの部分集合族で確率を計算できる部分集合が満たしていてほしい性質を満たした部分集合族:\sigma -加法族 \mathcal{F}を上で準備しました。

最後に確率空間が確率空間たる最も重要な要素である確率測度について書きたいと思います!

確率測度とは、 \sigma -加法族に含まれる \Omegaの部分集合に対してそれが生じる確率を与えるものです。つまり、 \mathcal{F}から \mathbb{R}への関数 P

  1.  ^\forall A \in \mathcal{F}, 0\leq P(A)\leq 1

  2.  P(\Omega)=1

  3.  A_i \in \mathcal{F}, i\in \mathbb{N}が互いに共通部分を持たない \Rightarrow P\left( \cup_{i=1}^{\infty} \right) = \sum_{i=1}^{\infty}P(A_i)

を満たすものを確率測度といいます。

1つ目と2つ目はかなり直感的だと思います。単純に確率の非負性(負の確率はない)と規格化(確率は大きくても1)です。

3つ目に関しては簡単な例を示すと、コイントスがあります。コイントスの場合、 \Omega = \left\{ 表, 裏 \right\} \mathcal{F}=\left\{ \phi, \left\{ 表\right\}, \left\{ 裏\right\}, \Omega\right\}でモデル化できますが、この場合、


P(\left\{ 表\right\}) + P(\left\{ 裏\right\}) = P(\Omega) = 1

となります。すなわち、3つ目は排反な事象のいずれか一方が起こる確率はそれぞれの事象が起こる確率を足したものという高校数学で習ったことを表しているに過ぎないのです。

ですが、この単純な3つの公理的な定義から現代の確率論が発展してきたと考えるとなかなか感慨深いものです。

確率空間

さて、以上で確率空間の役者は出揃いました!

  • 集合 \Omega:確率現象が生じる場所

  •  \sigma - 加法族 \mathcal{F}:集合 \Omegaの中で確率を計算できる部分集合の集まり

  • 確率測度 P:確率の値

の3つです。そして、この3つ組 (\Omega, \mathcal{F}, P)のことを確率空間と呼びます!ここまで長い道のりでした。

なお、統計の文脈では

  •  \Omega → 標本空間

  •  \mathcal{F}の元 → 事象

などと呼んだりすることもあります。

さて、最後に公平なサイコロの確率空間でのモデルに触れて終わりたいと思います。

集合のところで少しお話したようにサイコロの場合はf:id:wakaba-mafin:20181128013438j:plain:right:w170


  \Omega = \{ , , , , , \}

そして、 \sigma -加法族 \mathcal{F} 2^{\Omega}

最後に、確率測度 P A\in \mathcal{F}に対して


  P(A) = \frac{\sharp A}{\sharp \Omega}

と定めれば、確率空間によって公平なサイコロをモデル化できたことになります。

まとめ

というわけで今回の記事では、確率空間ってなんですの?ってことで、

  • 確率現象が生じる場所 集合 \Omega

  • 確率を計算することができる事象が満たすべき性質を満たした部分集合族  \sigma -加法族 \mathcal{F}

  • 事象に対して確率を与える関数 確率測度 P

の3つを準備し、確率空間とは一体なんなのかについてご紹介しました。この記事が今まで確率について深く考えたことのない方の勉強の初めの第一歩になれば嬉しいです。

間違いのご指摘やご意見等ございましたらコメントのほどよろしくお願いします。また、ご質問等も歓迎です!どんな些細なことでもぜひお願いします!